2026年2月に行われた衆議院選挙。自民党が単独過半数を獲得するという結果になりました。沖縄の小選挙区でも大きな動きがありましたが、経営者や働く皆さんにとって気になるのは「私たちの手取りや、会社の負担はどうなるの?」ということではないでしょうか。
選挙期間中、多くの政党が「「現役世代の負担軽減」や「社会保険料の引き下げ」を訴えていました。しかし、選挙結果を受けて今後の政策がどう動くのか、冷静に見極める必要があります。
一方、2026年の決定している制度変更を見ると、社会保険の適用範囲は広がり、新たな拠出金も始まります。 今回は、沖縄の経営者の皆さんが特に押さえておくべき「106万円の壁の撤廃」と「子ども・子育て支援金」という2つの大きな変化について、わかりやすくお話しします。
「106万円の壁」がなくなるとどうなる?
パートやアルバイトの方を雇う際、「年収106万円を超えると社会保険に入らなければならない」という話を聞いたことがあると思います。 これが、2026年10月を目処に撤廃される方向で進んでいます 。
これまでは「従業員数51人以上の会社」で「月額賃金8万8000円以上(年収約106万円)」という基準がありましたが、この賃金の基準がなくなります 。 つまり、週20時間以上働いている方であれば、年収に関わらず社会保険(厚生年金・健康保険)に加入することになります(学生は除きます) 。
沖縄でも最低賃金が上がり続けており、週20時間働けば自然と月8万8000円を超えるケースが増えています 。今回の改正は、その流れを決定づけるものです。これにより、新たに約200万人の方が加入対象になると言われています 。会社としては、対象となるパートスタッフの社会保険料(会社負担分)が新たに発生することを見込んでおく必要があります。
新たに始まる「子ども・子育て支援金」
もう一つ、忘れてはいけないのが2026年4月から始まる「子ども・子育て支援金」です 。 これは、少子化対策(児童手当の拡充など)の財源を確保するために、医療保険(健康保険など)の保険料と合わせて徴収される新しい仕組みです 。
負担率は「0.23%」とされており、これを会社と従業員で半分ずつ負担します(労使折半) 。 「たった0.23%か」と思われるかもしれませんが、給与だけでなく賞与(ボーナス)からも引かれます 。毎月の社会保険料に上乗せされる形になるため、チリも積もれば山となります。 これは全世代・全企業で子育て世帯を支えようという制度ですので、避けて通ることはできません 。
まとめ
選挙では「手取りを増やす」という言葉が飛び交いましたが、現実を見れば、これら2つの制度改正によって、直近の社会保険料負担が劇的に下がることは考えにくいでしょう。
この流れの中で、「負担を減らす魔法」はありません。 だからこそ、経営者の皆さんに意識していただきたいのは、 従業員一人ひとりが長く安心して働ける環境を作り、会社の生産性を上げていく。それが、結果としてコスト増を吸収する唯一の方法です。
よくある質問
専門家がお答えします(Q&A)
Q. 「106万円の壁」がなくなると、パートの手取りは減りますか?
A. 社会保険料が引かれる分、毎月の手取り額は減る可能性があります。
しかし、厚生年金に加入することで、将来受け取る年金が増えたり、病気やケガで休んだ時に「傷病手当金」がもらえたりと、保障は手厚くなります。単に「損をする」と考えず、万が一の安心を買うと考えていただくよう、従業員の方への丁寧な説明が大切です。
Q. 「子育て支援金」は、子育て中の人だけが払うのですか?
A. いいえ、全世代・全従業員が対象です。
子育て世帯を社会全体で支えるという目的のため、独身の方や子育てを終えた方も含め、公的医療保険に加入しているすべての方(と会社)が負担します。給与明細上では健康保険料と合わせて徴収される形になります。
このコラムを書いている人
玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由



