退職を控えている方や、すでに会社を辞められた方にとって、すぐに直面するのが健康保険の手続きです。会社員時代はお給料から自動的に差し引かれていたため、あまり意識していなかったという方も多いのではないでしょうか。
退職後は、これまで加入していた会社の健康保険から抜けることになります。日本の医療制度では、必ず何らかの公的医療保険に加入しなければなりません。沖縄県内でも、転職や独立などを機に退職される方は多く、この健康保険の切り替えは多くの方が悩まれるポイントです。
この記事では、退職後に選べる健康保険の種類と、代表的な選択肢である「任意継続」と「国民健康保険」の違いについて、分かりやすく解説します。
退職後の健康保険、選べる3つの道
会社を退職した後の健康保険には、大きく分けて以下の3つの選択肢があります。
・会社の健康保険をそのまま続ける(任意継続)
・お住まいの市町村の健康保険に入る(国民健康保険)
・ご家族の健康保険に入る(被扶養者になる)
もし、ご家族(配偶者や親など)が会社員で健康保険に入っており、ご自身の今後の収入が一定の基準を下回る見込みであれば、ご家族の健康保険に入れてもらうのが費用面では最も負担が少なくなります。つまり、ご自身の保険料を直接払う必要がなくなるということです。
しかし、その基準に当てはまらない場合や、ご自身で独立して事業を始める場合などは、「任意継続」か「国民健康保険」のどちらかを自分で選んで加入する必要があります。
任意継続とは?仕組みと注意点
任意継続とは、退職するまで加入していた会社の健康保険に、引き続き加入できる制度のことです。原則として最長2年間加入することができます。
会社員時代は、健康保険料の半分を会社が負担してくれていました。しかし、退職して任意継続を選ぶと、会社が負担してくれていた分も自分で支払うことになります。つまり、単純に計算すると、在職中の約2倍の保険料を支払うことになるということです。
これだけ聞くと負担が大きく感じられますが、任意継続には保険料の「上限」が設けられています。退職前のお給料が高かった方の場合、国民健康保険に加入するよりも、この上限がある任意継続のほうが、結果的に月々の負担額が抑えられることがあります。
また、ご家族を扶養に入れている場合、任意継続であればご家族分の追加の保険料はかかりません。
国民健康保険とは?任意継続との違い
国民健康保険は、お住まいの市町村(または国民健康保険組合)が運営している健康保険です。
国民健康保険の保険料は、前年の所得(収入から経費などを引いた金額)と、加入する人数、そしてお住まいの市町村の基準によって計算されます。
注意が必要なのは、国民健康保険には会社員の健康保険のような「扶養」という考え方がない点です。ご家族がいる場合は、配偶者やお子様の分も含めて、加入する人数分の保険料がそれぞれ計算されて合算されます。
一方で、退職後に収入が大きく減った場合、国民健康保険であれば、翌年の保険料は下がった所得をもとに再計算されます。そのため、1年目は任意継続が良くても、2年目は国民健康保険のほうが負担が少なくなる、というケースも珍しくありません。
結局どちらを選ぶべきか?
結論から申し上げますと、どちらを選ぶべきかは「退職時の給与」「前年の所得」「ご家族(扶養)の人数」「お住まいの市町村」によって大きく変わるため、一概には言えません。
ご自身にとって適切な選択をするための最も確実な方法は、それぞれの実際の金額を調べて比較することです。
・任意継続の金額:退職する会社を管轄する協会けんぽ(または健康保険組合)に確認する
・国民健康保険の金額:お住まいの市役所・町村役場の窓口で、前年の収入がわかる書類(源泉徴収票など)を提示して試算してもらう
役所の窓口で相談すれば、丁寧におおよその金額を教えてくれます。退職時は様々な手続きで慌ただしくなりますが、ご自身の生活を守るための大切なステップですので、ぜひ比較検討を行ってみてください。
専門家がお答えします(Q&A)
健康保険の切り替えについて、よくいただくご質問にお答えします。
専門家がお答えします(Q&A)
Q. 退職後、いつまでに健康保険の手続きをすればよいですか?
A. それぞれに期限が決められています。
任意継続は退職日の翌日から20日以内、国民健康保険は14日以内にお住まいの役所で手続きを行う必要があります。期限を過ぎると希望通りに任意継続へ加入できなくなることがあるため、事前の準備が大切です。つまり、退職する前からどちらにするか比較検討を始めておくことが、スムーズな手続きにつながるということです。
Q. 途中で任意継続から国民健康保険に切り替えることはできますか?
A. はい、ご自身の希望で途中で切り替えることが可能です。
以前は一度任意継続を選ぶと原則として2年間はやめることが難しかったのですが、現在は制度が変わり、希望の申し出をすれば途中で任意継続をやめて国民健康保険に移ることができます。退職翌年の収入が下がった場合などに、負担状況に合わせて見直すことができるのでご安心ください。
| 比較項目 | 任意継続(会社の保険) | 国民健康保険(市町村の保険) |
|---|---|---|
| 保険料の決まり方 | 退職時の給与をもとに計算(上限額の決まりあり) | 前年の所得とお住まいの市町村の基準をもとに計算 |
| 扶養制度の有無 | あり(条件を満たす家族の分の保険料は追加でかかりません) | なし(加入する家族全員分の保険料が人数分かかります) |
| 加入できる期間 | 最長2年間 | 制限なし(別の健康保険に加入するまで) |
まとめ
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このコラムを書いている人
玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
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