会社で働く方の時間を管理する上で、残業代の計算は非常に大切な要素です。その中でよくご相談をいただくのが、時間や金額に半端な数字が出たときの処理方法です。
間違った処理をしてしまうと、働く人を守る法律である労働基準法に違反してしまう危険があります。今回は、国である厚生労働省が認めている正しい端数処理の取り決めについて解説し、実際の業務で気をつけるべき点もご紹介します。
残業代の計算で間違いやすい端数の取り扱い
残業代とは、決められた時間を超えて働いた時間に対して支払われる割増賃金のことです。つまり、通常の給料よりも高い割合で支払われる賃金ということです。
この残業代を計算する際、どうしても割り切れない金額や、細かな時間の端数が出ることがあります。計算を簡単にするために、毎日発生する数分間の残業時間を切り捨てて計算しているというお話を伺うことがありますが、これは法律違反となります。
働く時間は原則として1分単位で計算して給与を支払う必要があります。働いた分の給料を払わないことは許されていません。しかし、事務作業の負担を減らすための例外として、国が認めている特定の条件に限って端数を処理することが認められています。
国が認める3つの端数処理の取り決め
国が認めている端数処理には、大きく分けて3つの種類があります。これらはすべて、1か月単位での合計に対して行う処理であり、毎日の計算で行ってよいものではありません。
1つ目は、時間の端数処理です。 1か月における残業時間、休日出勤の時間、深夜労働の時間のそれぞれの合計について、30分未満の端数が出た場合は切り捨て、30分以上となった場合は1時間に切り上げて計算することができます。
例えば、1か月の残業時間の合計が15時間20分だった場合は15時間として計算し、10時間45分だった場合は11時間として計算することができます。ただし、この処理を行うためには従業員の方々に事前の説明を行い、納得していただくことが大前提となります。勝手に切り捨てを行うと、大きな揉め事につながる危険があります。
2つ目は、時間単価の端数処理です。 給与の基礎となる1時間あたりの金額や、1時間あたりの残業代を計算した際、1円未満の端数が発生することがあります。この場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げて計算することができます。
例えば、計算結果が1,234円49銭であれば1,234円とし、1,234円50銭であれば1,235円とすることができます。
3つ目は、残業代総額の端数処理です。 1か月の残業代をすべて合計した総額に1円未満の端数が出た場合も、先ほどと同じように50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げることが認められています。
これらはあくまで計算を円滑に行うための例外措置です。常に会社側に有利になるような、すべてを切り捨てる処理は違法となりますので注意が必要です。
沖縄の企業が気をつけるべき給与計算の落とし穴
沖縄の事業所は少人数で運営されている会社が多く、出勤や退勤の時間をタイムカードで記録し、表計算ソフトなどを使って手作業で給与計算をしている企業も少なくありません。
そのため、手作業で計算式を作っていると、端数処理の設定を間違えてしまい、それが何年にもわたって給与計算全体に影響を及ぼしてしまうことがあります。
また、沖縄県では毎年のように最低賃金の引き上げが行われており、働く方の基本給を定期的に見直す必要があります。基本給が変われば1時間あたりの単価も変わり、残業代の金額も変わります。その都度、正しい端数処理ができているかを確認することが求められます。
さらに、残業代に関する取り決めは、会社の就業規則や給与の決まりごとをまとめた賃金規程にしっかりと文字で記載し、従業員の方々に説明する責任があります。記載がないまま処理を続けると、後から計算のやり直しを求められる事態にもなりかねません。
自社の計算方法が正しいかどうか不安な場合は、専門的な知識を持つ社会保険労務士にご相談いただくことで、実情に合った正しい決まりを作るためのご支援が可能です。
専門家がお答えします(Q&A)
給与計算の端数処理について、沖縄の経営者様や担当者様からよくいただくご質問にお答えします。
専門家がお答えします(Q&A)
Q. 毎日の残業時間を15分単位で切り捨てて計算してもいいですか?
A. いいえ、毎日の残業時間を切り捨てることは法律で禁止されています。
国が認めている例外は、あくまで「1か月分の合計時間」に対する処理のみです。毎日の端数を切り捨てることは、働いた分の給料を払わないことになります。つまり、法律違反になるということです。
Q. 会社の就業規則に端数処理の決まりを書いていません。それでも処理して大丈夫ですか?
A. 就業規則や給与の決まりにしっかりと記載し、従業員のみなさんに説明する必要があります。
会社と従業員の間で給与の計算方法について共通の認識を持たないと、不信感を招いて揉め事につながる危険があります。専門家に相談することで、会社の状況に合った正しい決まりを作れるという効果があります。
| 対象となる項目 | 国が認める正しい処理の方法 |
|---|---|
| 1か月の残業時間の合計 | 30分未満は切り捨て、30分以上は1時間に切り上げ |
| 1時間あたりの残業代や1か月の残業代総額 | 50銭未満は切り捨て、50銭以上は1円に切り上げ |
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このコラムを書いている人
玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由



