先日、沖縄県内の金融機関の職員が顧客の定期貯金を着服していたニュースがありました 。 経営者や人事担当者の皆様であれば、このような報道を見て「もし自社で起きたら」と冷や汗をかくのではないでしょうか。目の前に現金があれば魔が差す者もいるかもしれませんし、職場でハラスメント等の問題行動を起こす者もいます 。 そのとき、「明日から来なくていい」と感情のままに言い渡すことはできるのでしょうか。沖縄県内では求人倍率が長期的に1倍を超え、人手不足が深刻な状況にあります。社内のルール整備を後回しにしていると、いざという時に適切な対応ができず、組織全体が崩壊するリスクがあります。
懲戒処分は「解雇」だけではありません
懲戒処分と聞くと「懲戒解雇」をイメージしがちですが、一般的には軽いものから重いものまで複数の種類があります 。
戒告、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨退職、そして最も重い懲戒解雇の6〜7種類を設けることが多いです 。諭旨退職は、会社が一方的に切るのではなく、本人に退職を促して考える余地を与える処分であり、規定によっては退職金が払われる場合も多くあります 。 ここで注意すべきは、減給などの処分の名称や種類は、法律で決まっているわけではないという点です 。各企業が自社の就業規則に定めることで、初めてそのメニューを行使できます 。就業規則に全く法律上の決めがない状態であれば、原則として懲戒処分を行うことはできません 。 また、1つの不祥事(罪)に対して、複数の処分(罰)を同時に下すことはできません 。「減給だけでは足りないから、降格も追加しよう」という二重処罰は禁止されています 。どのような処分を下すかは、用意されたメニューの中から、その事案に適正なものを1つ選ぶことになります 。
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自社の就業規則が適切か相談する処分をためらうことが組織を壊します
不祥事に対する処分は、単に本人に与える罰ではありません 。会社の責任をちゃんと果たすための罰です 。 どのような処分にするかは、その人がやった行為がどれだけ組織や会社に影響を与えたかというところで決める必要があります 。
たとえば、管理職が明らかなハラスメントを行っているにもかかわらず、会社が処分を行わなかったとします 。それを見た職場の従業員は「この会社は本当に大丈夫か」と不安や不信感を抱くでしょう 。人材定着が課題となる沖縄において、会社への不信感は即座に離職へと直結します。 会社として「ハラスメントは許さない」と周知しているのであれば、組織に与える影響や信頼度を損ねた度合いを加味し、適正な処分を下さなければなりません 。 同時に、不祥事を個人の問題として片付けず、会社の管理体制を見直す必要があります。
感情論ではなくルールの運用を
不祥事が発生した際、経営者が怒りに任せてその場で処分を言い渡すのは極めて危険です。労働契約法第15条により、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない懲戒処分は、権利の濫用として無効となります。自社の就業規則に懲戒の事由と種類が明確に定められているか。対象者に弁明の機会を与えたか。過去の事例や他社水準と比較して処分が重すぎないか。これらを冷静に確認する手続きが求められます。問題が起きてから慌ててインターネットのひな型を引っ張り出しても、自社の実情に合っていなければ運用できません 。平時のうちに就業規則を見直し、ルールとして機能する状態に整えておくことが、会社と従業員を守る盾となります。
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このコラムを書いている人
玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由



