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深刻な人手不足が続く沖縄。多様な人材確保の鍵となる「シフト制」

沖縄県の有効求人倍率は長期にわたって1倍を超える水準が続いており、飲食業や観光業をはじめとする県内のあらゆる産業で深刻な人手不足が課題となっています。大卒の就職内定率が全国を下回る一方で、早期離職率の高さも目立ち、人材の定着に向けた企業の悩みは尽きません。

 

こうした厳しい労働環境の中で、多くの企業が新たな労働力の確保に動いています。高齢者の雇用確保措置は県内でもほぼ全ての企業が実施しており、70歳までの就業確保も拡大中です。また、外国人労働者数も過去最高を更新し、とくに専門・技術分野での活躍が目立ってきています。

 

このように、働く方々の年齢層や国籍、ライフスタイルが多様化する中、それぞれのニーズに合わせた柔軟な働き方を提供できる「シフト制」を導入する企業が増えています。一定期間ごとに労働日や労働時間を調整できるシフト制は、働き手にとっては家庭や学業との両立がしやすく、企業にとっては繁閑の波に合わせた無駄のない人員配置が可能になるという大きなメリットがあります。 

 

しかし、その「柔軟さ」は、一歩間違えると「曖昧さ」につながります。日々の業務に追われる中で、シフトの決定ルールが曖昧になっていたり、会社都合で急にシフトを削ってしまったりといった運用に心当たりはないでしょうか。実は、この曖昧な運用こそが、後々大きな労務トラブルを引き起こす火種となり得るのです。

 

労働契約と就業規則。「シフトによる」という記載の落とし穴

 

労働条件を曖昧にしたまま契約を結ぶと、従業員が不本意な働き方を強いられていると感じ、労使間のトラブルに直結します。これを未然に防ぐため、労働基準法では、雇用契約を結ぶ際に「始業及び終業の時刻」や「休日」といった重要な事項を書面などで明示することが義務付けられています。 

 

シフト制労働者であっても、この義務は例外ではありません。労働条件通知書や雇用契約書に単に「シフトによる」とだけ記載して済ませていないでしょうか。実は、これだけでは法令上の明示義務を果たしたとは言えません。原則的な始業・終業時刻を記載したうえで、労働契約の締結と同時に一定期間分のシフト表を交付するなどの具体的な対応が必要になります。休日についても同様に、最低限の休日付与の考え方(毎週1回、または4週間を通じて4日以上など)を明示しなければなりません。 

 

また、常時10人以上の従業員を使用する事業場に作成・届出が義務付けられている「就業規則」においても注意が必要です。就業規則上に「始業及び終業の時刻等は、個別の労働契約による」「シフトによる」とだけ記載しても、作成義務を果たしたことにはなりません。基本となる時刻や休日を定めたうえで、具体的にはシフトで定める旨を規定する必要があります。 

 

さらに見落としがちなのが、年次有給休暇の扱いです。所定労働日数が少ないパートタイム労働者等であっても、継続して6か月間勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合には、勤務日数に応じた有給休暇を付与する義務があります。シフト制であらかじめ所定労働日数を定めていないからといって、有給休暇を与えないことは認められません。  

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曖昧な運用が招く休業手当のリスクと労務トラブル

 

シフト制において特に問題となりやすいのが、会社都合によるシフトの削減です。売上の減少や客足の鈍りといった事情から、予定していたシフトに入ってもらえなくなった場合、「働いていないのだから賃金を支払わなくてよい」と判断される経営者様もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、労働基準法では、使用者の責任に帰すべき事由によって労働者を休業させた場合、その休業期間中、平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければならないと定められています。この「使用者の責に帰すべき事由」には、経営上や管理上の障害なども広く含まれます。シフト制労働者であっても、会社都合でシフトを削った場合は休業手当の支払い対象となる可能性が高いのです。 

 

シフトの作成や変更に関するルールが労使間で共有されていないと、従業員は「一方的にシフトを減らされた」「休業手当も支払われない」と不満を募らせます。これが引き金となり、労働基準監督署の総合労働相談コーナーへ駆け込むなど、個別労働紛争へと発展する事例も少なくありません。一度失われた職場の信頼関係を取り戻すことは難しく、結果として早期離職を招き、人手不足と採用コストの増加という悪循環に陥ってしまいます。 

 

トラブルを未然に防ぐためのルールづくりは専門家へ

 

シフト制による労務紛争を未然に防ぎ、企業と従業員の双方が納得して働ける環境をつくるためには、事前のルールづくりが何より重要です。

 

シフト表を作成する際に事前に意見を聴取する方法や、確定したシフトを通知する期限、さらには一度確定したシフトを変更する際の手続きなどを、あらかじめ労使で話し合い、合意しておくことが望まれます。確定した労働日や労働時間を後から変更することは労働条件の変更にあたるため、一方的な決定ではなく、双方が納得できる運用ルールを就業規則等に明記しておくことが求められます。 

 

しかし、日々の事業運営に奔走される中で、最新の法令や厚生労働省のガイドラインをすべて把握し、自社の規程に落とし込むことは、非常に負担の大きい作業です。不確実な情報をもとに自己流で契約書や就業規則を作成してしまうと、いざトラブルが起きた際に会社を守りきれない可能性があります。

 

現在の雇用契約書や就業規則の記載内容に少しでも不安を感じられた場合は、社会保険労務士へのご相談をお勧めします。実務に即した適切なルール設計を通じて、従業員が安心して長く働ける職場環境を整備し、人材定着による事業の成長をサポートいたします。

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このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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